ポラリス

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吉田 重清 様

2016/02/03リアル感動ストーリー

目の前にいる妻は確かに僕の手を握っているのに、どうして…。

健康だけが取り柄だった僕が“脳梗塞(のうこうそく)”で倒れるなんて、誰も予想していなかったでしょうね。毎日陽が昇る前に起き、商売人の威勢の良い声が飛び交う中央市場で僕は張り切って魚を売っていました。仕事の後は、いつもの仲間と一杯やる習慣があってね。妻と6人の孫にも恵まれ、この当たり前の日々に幸せを感じずにはいられませんでした。しかし、そんな日々が一瞬にして崩れ去ったのです。名前は聞いたことがあったけど、その後に続く言葉なんてもう耳に入りませんでした。ただ、身体の半分にだけ感じる生温かい空気が、僕に病を痛感させました。

そして、はっと気がつきました。目の前にいる妻は確かに僕の左手を握っているのに、ぬくもりがわからない。孫が触れても、シーツに触れても、何も感じない。どうなっているんだ…。本当にショックでした。そこからしばらくして施設でリハビリを始めたのは、みんなの悲しむ顔を見たくなかったから。そしてその施設を出た後、ケアマネジャーの方に紹介していただいたのがポラリスだったのです。

身体の変化を感じると、思いもしなかった欲が出てきたんです。

ポラリスに来たときの僕は歩くことができず、車椅子に乗っていました。だから送迎があったのはほんとうに有難かったですね。家族には迷惑をかけたくなかったので…。自分の意思と身体を切り離されたような私でしたが、ここの明るい笑顔や何気ない一言に心を打たれました。だからいつの間にか安心して身体を預けることができたのだと思います。しっかりと支えてくれるスタッフの方の手に僕は頼りっきりでしたから、ある日その手がふと離れたとき、まさかと思いました。だけど次の瞬間、僕は一人で立っていたんです。

それは紛れもなく、半年間自分のペースで続けてきたパワーリハのおかげでした。自分でもわからなかった身体の変化を感じると、それまで思いもしなかった欲がでてきちゃってね。今度は歩きたい。杖を使わずに孫と手をつないで歩きたいと思うようになった。やっぱり孫の前では、以前のままの元気なおじいちゃんでいたかったからね。

夢にまで見た「歩く」という感覚

それまで気づいていなかったパワーリハの効果を感じると、もっとできることが増えるのではないかと思うようになりました。そんな風に気持ちが前向きになっていたからなのか、スタッフに見守られながら、歩行練習用の平行棒から恐るおそる手を離しました。すると一歩、そしてもう一歩と僕の足が思い通りに動いたのです。夢にまで見た「歩く」ということは、かつて元気に店の前に立っていたあの頃と同じ感覚でした。自分の意思でトイレに行けるようになって、一つひとつできることが増えていき、気づけば孫と一緒に散歩までできるようになりました。そして今では一時間も歩いていることだってあるんですよ。孫もすっかり大きくなって、一番上の子はサッカーを始めました。「おじいちゃんは危ないからあっち行ってて」ってあんまり相手してくれないんですけどね。できることなら、サッカーにも挑戦してみたいなぁ。

夢にまで見た「歩く」という感覚

今は孫の通っている小学校の通学路に立って、週に3回旗振りをしています。毎朝子どもたちの明るい笑顔と「おはよう」の声を聞くだけで、気持ちが若返っていくようですね。中にはハイタッチをしてくれる子もいてね。その度に人のぬくもりを実感することができるんです。元気に立っていることができる限り、旗振りは続けていくつもりです。(事業所の壁を指さし)あそこに飾ってある絵は「6丁目の朝日」というタイトルでね。僕が病気になったときに娘が買ってくれた絵具で朝日が昇る瞬間を描きました。絵なんて病気になる前は書いたこともなかったのに。失くしたものもたくさんあり、遠回りもしたのかもしれません。だけど、僕は今とても幸せです。そして、僕の人生に今ようやく光が見えてきたところなのです。




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